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在外子女教育を考える 〜海外で日本の社会科を学ぶ意義
米日教育交流協議会 代表 丹羽筆人
社会科学習は自国を知り、他国を理解するために重要な役割を担っている アメリカでは多くの日本人子女が現地校に通学し、補習校や学習塾などで日本語での教科学習を受けています。そこで学習する算数(数学) や理科は現地校での学習と重複する分野もあり、日本語が苦手な子供も内容が理解し易く楽しく学習できるようです。しかし、社会科は現地校での学習との重複が少ないために、日本語がそれほど苦手ではない子供にとっても国語以上に負担を感じ、苦手意識を持つことも多いようです。確かに、明治維新の授業に使う歴史用語を見ても、大政奉還、王政復古の大号令、五箇条の御誓文、版籍奉還、廃藩置県、徴兵令、地租改正、殖産興業・・・・・などの難しい漢字が目立ちます。さらに、徳川慶喜、西郷隆盛、勝海舟、岩倉具視などの人物名も加わります。日頃は英語環境にいる子供にとっては、これらの用語や人物の内容理解のみならず、その漢字を読むことにも書くことにも負担を感じるようです。 このことは地理や公民分野でも同様です。都道府県名や都道府県庁所在地名、山や川、平野名、政治・経済に関する用語が難しいという声が聞かれます。授業での問いかけにも、漢字の読みが分からないので答えられない、漢字が多いとノートを取りたくないという子供も目立ちます。従って、社会科の学習が嫌いな子供も多く、なぜこんなことを覚えるのかとか、将来役に立たないのではないかというような疑問を感じ、学習を怠る傾向にもつながっているようです。 ところで、彼らは現地校でも社会科を学習しています。地理や歴史、政治や経済など現在生活している国のことを学習しているのですから、学習内容も理解し易いと思います。しかし、日本人にとっては英語が難解であったり、アメリカの歴史や地理、文化に関する知識が乏しいために理解がしにくく、苦手科目の代表となっているのも確かです。 社会科を学ぶ目的の一つはその国の歴史や地理、文化などに関する知識を学び、それらを理解することです。そして、その国を取り囲む諸国や世界のことも学びます。ただし、他国や世界を学ぶ際にはその国を中心に考えます。つまり、アメリカの社会科はアメリカ中心、日本の社会科は日本を中心にまとめたカリキュラムで学びます。従って外国人には理解しにくいのも当然です。 こう考えると、在外子女は日本の社会科の学習内容もアメリカの社会科の学習内容も習得しきれていないことになりそうです。アメリカのことも日本のことも中途半端な理解では、英語も日本語も中途半端なセミリンガルと同じです。つまり、年齢相応の知識を持たない人になってしまいます。自国のことも知らずして、他国のことを理解することはできません。自分を知らずして他人を理解することはできないからです。従って、社会科の学習内容を習得することは自国を理解する上でも大切なことなのです。 では、社会科離れしつつある子供の学習意欲を高めるためにはどうすれば良いのでしょうか。それは日本のすがたを自ら見聞することです。毎年同じように、祖父母の家に滞在したり、学校での体験入学するのみではなく、いろいろな角度から日本を感じることが必要です。山村に行き、そこの山や川、土地を利用して人々がどう生きているのかを知ることや、歴史的な事件があった場所を訪れ、それについて学習することなどは、その後の社会科学習の強い動機付けになりますので、ぜひお勧めしたいですね。
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~Weekly Business News 2007年2月23日号掲載
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