在外子女教育を考える
〜日本語力を維持・向上させるための心構え

 

米日教育交流協議会
代表 丹羽筆人

 

日本語補習校任せにせず家庭での学習習慣をつけることが大切

 日本は入学・進級の季節を迎えています。海外の日本語補習校でも同様に新年度が始まろうとしています。初めて補習校に入学する子どもたちには、新幼稚園児や新1年生として入学するとか、日本からやって来て転入するという場合がありますが、いずれも平日は現地校に通学しながら、日本語力をどう培っていくのかということが共通の課題です。

 補習校は、ほとんどが土曜または日曜に週1回のみ行われています。年間授業日数は概ね40日間で、1日当たりの時間数は4〜6時間です。また、多くの学校が文部科学省の検定教科書を利用して授業を行っていますが、日本の学校に比べれば圧倒的に少ない授業時間数では通り一遍の学習しかできません。補習校の授業時間のみでは、繰り返し学習する時間が不足し、学習内容を定着させることは教える側にとっても至難の技です。したがって、補習校に通って週1回日本語環境で学習しているから大丈夫という考えは禁物です。むしろ週1回しか学習していないとご理解いただきたいと思います。

 ところで、日本から来たばかりの頃はどうしても現地校での学習が気になり、せっかくアメリカに来たのだから英語を身につけることに専念すればよいという考えに偏りがちです。確かに最初の内は英語が全く分からず、現地校での生活にストレスを感じがちですから、それを克服するために英語の学習対策に力を入れたいというのも当然の親心です。しかし、親の心配をよそに子どもはどんどん英語を吸収し、知らないうちに現地校の生活になじんできます。毎日朝から夕方まで英語環境の中にいるのですからそれも当然のことなのです。やがて日常会話の中で子どもが使った英語の発音の良さに感動し、アメリカ人の友人と英語で楽しく会話する子どもを見て大満足する日がやって来ます。ただし、ふと気がつくと、教科書の音読でつまづいてばかりいる、漢字が書けなくなったというように、日本語力が極端に落ちていることに愕然とすることはよくあることです。そんな時、補習校には毎週行っていたのにとか、宿題もやっていたのにどうしてこんなことになってしまったのか、というような疑問が湧いてくることでしょう。しかし、先に述べましたとおり、補習校の限られた時間数の授業を受け、宿題をこなすのみでは学年相応の日本語力を維持するのには不十分なのです。授業時間数、学習時間数とも圧倒的に勝る英語が学習言語として子どもの思考力、表現力を支配していくからです。英語の支配力は学年が低いほど早く強くなります。学齢期前に来米した子どもの場合は、英語が支配する力が圧倒的に強いと見てよいでしょう。

 その英語の支配に負けないように日本語力を維持・向上させるためには、日々のたゆまぬ努力が必要です。毎日欠かさず時間を決めて漢字の練習をする、教科書を音読する、日本の本を読む、日記をつける、そして日本のテレビやビデオを見る、などを通して「読み」「書き」「聞く」「話す」の4技能を培うトレーニングを習慣づけていくことが必要です。そして、このトレーニングを実践する場は家庭であり、コーチは親なのです。

 

            ~Weekly Business News 2007年3月30日号掲載

 

 

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