日本の教育事情

〜進む教育改革は本当に必要か

 

米日教育交流協議会
代表 丹羽筆人

 

「愛国心」や「規範意識」の成績評価、戦争責任が希薄化する「教科書検定」、「学校管理職」の新設、「教育現場への国の関与」など、疑問の目立つ教育改革

 2006年度末となった先週は政府の教育関係での動きが目立ちました。まず、教育再生会議が「道徳の時間」を「徳育」という国語や算数と同じ「教科」に格上げするよう提言する方針を固めました。また、文部科学省が2008年度から使用する高校教科書の検定結果を公表しました。そして、政府が学校教育法、地方教育行政法、教員免許法の教育関連3法に関する改正案を国会に提出したことなどが挙げられます。

 道徳が教科に格上げされると、文部科学省の検定対象となる教科書を使用し、成績評価も行なわれることになります。「徳育」では、「わが国が培ってきた倫理観や規範意識を子供たちが確実に身につけること」を目指すとのことですが、「教科」として行なうことには疑問を感じます。「倫理観や規範意識」は家庭や地域社会で身に付けていくべきものであり、国が押し付けるものではありませんし、成績を付けるという性格の物ではないのではないでしょうか。また、「徳育」という教科を設けなくても、学校生活や既存の教科の授業中に指導できることだと思います。

 高校教科書の検定結果では、学力低下を背景に受験に出題されやすい内容の追加を始めとするページ数の増加が目立ったこと、漫画を多用しビジュアル化した教科書が大幅改定を求められたこと、などが報道されました。その中で、社会科教師である私は、日本史の教科書での沖縄戦における住民の集団自決に関する記述から、日本軍の命令によるものであることが削除されたことに疑問を感じました。確かに日本軍の誰が命令したのかという点においては不明確であることも事実なのですが、国家総動員法や皇国教育という国の政策によって住民がそうせざるを得なかったことは間違いありません。安倍首相が唱える「戦後レジーム(体制)からの脱却」を意識してのことか、最近では中学校の教科書も含めてひめゆり部隊、学徒出陣の記述がないとか、戦争を美化するように受け止められる記述をする教科書もあります。戦争体験者が徐々に少なくなっていく中で、教科書は戦争の悲惨さを伝え、日本が平和主義を貫くための重要な役割を担っていると思います。その教科書において、戦争によって多くの民衆を犠牲にした責任をあいまいにする記述をしてはいけないと思います。

 教育関連3法案は、昨年末の教育基本法の改正内容を受けた改正案です。学校教育法では、「国と郷土を愛する態度」や「規範意識や公共の精神などに基づき社会に参画する態度」が義務教育の目標に盛り込まれています。また、副校長、主幹教諭、指導教諭という管理職の設置ができることになりました。地方教育行政法では国が教育委員会を通じて教育現場に関与できること、教員免許法では教員免許の有効期限を設け、10年毎に研修や評価を含めた更新制度を導入することが定められています。学校教育法に定められた「愛国心」や「マナー」は、先に述べた「徳育」として国の方針に基づき教えられ、評価されることになります。また、学校内の管理職を増強し、国の方針を徹底させ、教員を評価システムによって管理しようという狙いが見えます。ますます多様化する子供たちを抱える教員の「指導力」が問われている中で、個性や自主性を発揮できない教員が増えることを懸念せざるを得ません。

           

           ~Weekly Business News 2007年4月6日号掲載

 

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