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在米日本人子女の教育を考える 〜用語の理解が難しく敬遠される社会科
米日教育交流協議会 代表 丹羽筆人
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文章読解力や論文作成力の向上のためにも力を入れるべき 「社会きら〜い」 「何のためにこんな昔のことを勉強するの?」 「山や川の名前なんか知らなくたって生きていけるじゃん。」 私は日米間の教育的な交流活動を行う一方で、日本人学校、補習校、学習塾などで在米日本人子女の社会科の指導をしていますが、授業中にこんな子供たちの声が聞こえることがあります。確かに、日頃は目や耳にすることのない難解で漢字の多い用語や人名が多数現れる社会科は、特にアメリカで暮らす子供たちにとってはとても厄介な教科なのです。 「中大兄皇子」が「なかのおおえのおうじ」と正しく読めない、読めても書けない子供がいます。火事や交通事故が起こったら何番に電話しますか?という質問には、即座に911が思い浮かび、火事は119で交通事故は110ということを一度教えてもしばらくすると忘れてしまうケースもあります。また、時代名や都道府県名、県庁所在地名を正しく答えることのできない中学生もかなり多数います。 なぜ、このような状況となってしまうのでしょうか。在米補習校の社会科学習時間数は、文部科学省が学習指導要領で定める時間数の3分の1以下です。多くの補習校で国語が重要視され、補習校によっては社会科は設置されていない学年がある、選択制である、毎週設置されていないなどのケースも見られます。また、社会科に登場する事柄は、日本では自分が生活している範囲内にあるものも多いです。例えば、教科書に登場する施設は町でいくらでも見ることができますし、家庭内で流れているテレビ番組からは、都道府県名や都市名の情報も無意識のうちに聞こえてきます。歴史もののドラマやアニメーションやマンガ本も多数あります。当然のことなのですが、アメリカにはこのような環境がありません。したがって、興味や関心を持ちにくい、必要性を感じにくいのです。また、保護者の中には、将来受験では必要ないのでそんなに勉強しなくてもよいとお話されるということもあるようです。実際、社会科が入試で必要なのは、ほんの一部の中学や国立高校と帰国生枠のない公立高校くらいなのです。 もちろん、国語は日本語学習の基本であり、将来受験する場合の重要教科です。しかし、社会科で学ぶ内容は、子供たちが将来生活していくための知識や考え方の基礎となるものです。確かに国語教科書で習っていない漢字や難解な語句も登場しますが、それらの語句の知識が逆に国語教科書の文章読解力にとても役立つのです。また、論文を作成するための基礎知識や自分の意見の構築にも必要となってくるのです。では、どのような姿勢で学習に取り組んでいけば社会科の学力向上につながっていくのでしょうか。この点については、来週号で述べようと思います。 〜Weekly Business News 2006年6月23日号掲載
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