日米の教育事情

〜日本語力向上のために必要なこと

 

 米日教育交流協議会
代表 丹羽筆人

 

家庭での親の教育が大きく影響する

 

8月4日付の新聞各紙に、全国学力テストの結果と親の所得の結果を追った調査結果が掲載されました。これは、文部科学省の委託を受けたお茶の水女子大学の耳塚寛明教授らの分析した結果が明らかにされたものです。この調査は、昨年度の全国学力テストに参加した小6のうち、5政令都市から100校、計約8,000人を抽出し、親と教師を対象に学習環境などを調べています。この調査結果で世帯収入と平均正答率(国語と算数)の関係を見ると、高所得ほど正答率も高い傾向が見られ、最も平均正答率が高かったのは1,200万円以上1,500万円の世帯でした。最も平均正答率が低かった200万円未満の世帯と比較すると20ポイント以上の開きがありました。

 この背景には、高所得者ほど教育に費用をかけていることもあると思いますが、この調査によると、高学力層の子どもの親が家庭で心がけていることに関する質問では、「小さい頃から絵本の読み聞かせをした」、「博物館や美術館に連れて行く」、「ニュースや新聞記事について子どもと話す」といった回答が多かったそうです。また、「本の読み聞かせをする」や「ニュースを話題にする」については、親の所得に関係なく学力向上に一定の効果が見られたとのことです。つまり、学力向上には親の収入との相関はあるものの、親の家庭での教育が大きく影響していると言えます。親が子どもにどんな教育を与えるか否かが重要なのです。

 この調査結果で高学力の子どもの親が与えた教育は、海外に暮らす子どもの日本語教育にも参考となるものです。日本語力向上には、「小さい頃からの本の読み聞かせをすること」、「ニュースや新聞記事について子どもと話すこと」はとても大切なことです。それは日本語に慣れ親しむことや、日本語のボキャブラリーを増やすこと、日本の社会の仕組みや文化を知ることなどが日本語力の向上につながるからです。美術館や博物館に行って、展示物について日本語で話すこともとてもよいことです。科学や歴史、芸術など幅広い分野に関する専門用語を日本語でも理解する絶好の機会になるでしょう。

 海外生まれや長期滞在の子どもはもちろんですが、短期滞在の子どもでも、海外生活では日本語に触れる機会が圧倒的に少ないでしょう。そのため、家庭では日本語で会話していても、日常生活以外での日本語のボキャブラリーは極端に不足しているケースも目立ちます。現地校で学習した政治や経済、科学などに関する分野の用語も英語では理解できても、それらに該当する日本語では理解できないという子どもが学年を問わず多数存在します。もちろん、これらの用語は補習校や学習塾で日本の教科書などの教材によって学習することもできますが、週1回の学習では定着することが難しいのも実情です。

 日英両語で学習している子どもにとっては、日英両語を社会に出ても通用するレベルまでスキルアップすることが必要でしょう。それができてこそバイリンガルであると言えます。正しい日本語、質の高いボキャブラリーを習得するためにも、家庭での教育は必要不可欠です。

                       

                 ~「週刊ビジネスニュース」 2009年8月28日号掲載

                                

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