日本の教育事情

〜最近の教育改革の動きから考えること

 

米日教育交流協議会
代表 丹羽筆人

 

教育改革は政治とは切り離し、教育現場の声を尊重してほしい

 辞任した安倍前首相は、教育改革に積極的に取り組んでいました。強行ではありましたが、教育基本法の改正は今後も多方面に影響を与えることと思います。しかしながら、改革路線に異議を唱えていた文部科学省や文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会(中教審)の勢力が復活して、教育改革も後戻りするのではないかとも言われています。確かに、安倍前内閣の設置した教育再生会議からの発案で「徳育」という名のもとに道徳教育が必修の教科となるという動きは見送られてしまいました。引き続き中教審で教科化の検討を開始するようになったようですが、安倍内閣の教育改革に歯止めがかかった一例と言えます。

 しかし、私は教育関係者の一人として政権が交代することによって、推し進めようとしていた改革の動きが後退するということに疑問を感じます。もちろん、政治と教育は切り離して考えることができない問題だと思いますが、教育は社会構造の変化に大きく関わっていると思います。「いじめ」による自殺者、親や兄弟を殺害する子ども、性犯罪を起こす教師などの問題は、今日もまた起こっているのです。これらの問題の背景にある社会問題に目を向ける必要はあると思われます。そして、このような深刻な問題を一刻も早く解決するために教育改革が必要だと思います。

 戦前の皇国教育を肯定するわけではありませんが、戦後にアメリカ主導で行なわれた教育改革によって、日本人が代々受け継いできた年長者を敬う心、ものを大切にする心、社会規範を遵守する心などが失われているのだと思います。戦後、経済大国として物理的に豊かな生活に恵まれた日本人は、江戸時代までは経済的に恵まれなくとも精神的に豊かな生活を送ることができていました。年長者は生活経験による豊かな知識を持っており尊敬されていました。寺子屋はボランティアのような安い月謝であるにもかかわらず、教師は熱意にあふれ、子どもたちの学習意欲も高く、当時世界一の識字率を誇っていたと言われています。

 安倍前内閣が行なおうとした教育改革は、明治から第二次世界大戦時にかけての教育路線に戻ると勘違いされたことが反感を招くことにもなったようです。しかしながら、古き良き時代の日本の教育を再認識するということであれば、決して間違っていなかったのではないかと思います。福田新内閣はこれまでの教育改革に対する反発を恐れることなく、政治的な利害を度外視して本当に必要な教育改革を自信を持って進めるべきだと思います。

教育現場の声=教師、保護者、子どもの意見がもっとも大切であるということを決して忘れてほしくはありません。子どもを育てたこともなく、教育者としての経験もない方々が行う教育改革は意味がないと思いますが、いかがでしょうか。

                        ~Weekly Business News 2007年10月5日号掲載

                                

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