日米の教育事情

〜日米で異なる義務教育後のあり方

 

 米日教育交流協議会
代表 丹羽筆人

 

義務教育でなければ学費負担増も自己責任?

 10月、橋下大阪府知事が、大阪府の私立学校助成金削減の問題をめぐって、私立高校に通学する高校生と懇談しました。私立学校助成金の削減は授業料値上げに繋がり、自分の親の収入では生活にも支障をきたすと訴える高校生に対し、橋下知事は、高校は義務教育ではないから学費の高い私立学校を選んだことも自己責任であると発言していました。つまり、公立高校に入学していればこのようなことはなかったというのです。ある意味でこれは正論かもしれませんが、不運にも公立高校の入学試験で不合格となった生徒にとっては納得がいかないでしょう。

 ご存知の通り、アメリカでは高校まで義務教育です。従って、学費も無料ですが、中学校と同様に居住地の学校に無試験で入学できます。これはとても公平であるようにも見えますが、公立学校であるにもかかわらず、学校間格差があるのも事実です。これは、教育費の財源が学校区に居住する住民から徴収する固定資産税によって賄われているからです。必然的に土地や住宅価格の高い地域の固定資産税は高額であり、そのような地域にある学校は、施設が充実しているのはもちろん、教員の給与も高額であるために、有能な教員を抱えることができます。また、教育の質が高いため、高所得者層が集まり、さらに土地や住居の価格も上昇していくという図式になります。一方、土地や住宅価格の低い地域は教育財源も不足しがちで、ますます教育の質も低下し、居住者層も低所得者が多くなるのです。つまり、義務教育の公立学校でありながら、学校間格差があるのがアメリカ社会の実情なのです。

 話は変わりますが、アメリカでは義務教育の高校を卒業すると、保護者の多くは大学進学に対する経済的援助をしないのが通例です。義務教育でない大学進学は、子ども自身が選択し、学費も自分で支払うという考え方が浸透しているからです。つまり、高校卒業と同時に成人として扱われるわけです。このような風習があるために、アメリカの大学には高校卒業後に働いて大学の学費を稼いだ後に入学する社会人学生も目立ちます。また、ローンで学費を工面して、卒業後に返還する学生もいます。大学は、親の庇護から独立した者が学ぶ場であるとも言えるのです。

 一方、日本の社会を見ますと、義務教育は中学で終了しますが、高校も義務教育に準ずるとも言える進学率を示しています。文部科学省の学校基本調査速報によると、平成20年度の中学卒業者の高校進学率は97.8%です。高等学校の義務教育化を検討してもよいかもしれません。公立高校には希望すれば入学できるようにすれば、低所得の保護者も苦労はしません。
 
また、日本では高校はもちろん、大学卒業まで親の脛をかじって通学するのが一般的です。さすがに大学まで義務教育にするとは言いませんが、高校は義務教育ではないので学費の負担増も自己責任というのは言い過ぎだと思います。行政が財政難に陥っている状況は理解していますが、未来を担う子どものためにも教育にかける経費の削減は避けていただきたいものです。

                       

                 ~「週刊ビジネスニュース」 2008年11月14日号掲載

                                

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