日米の教育事情

〜海外で日本語力を保持するために

 

 米日教育交流協議会
代表 丹羽筆人

 

多くの日本語や日本文化に触れることが大切

 

子どもの日本語力を保持することは、海外で生活する親御さんにとっては切実な問題です。日本語力保持のためには、日本語補習校などで定期的に学習を継続することが大切です。しかし、補習校の授業は週末のみなので、英語での学習時間が圧倒的に長いのが当然です。

また、海外で生まれたり、乳幼児期に海外移住した子どもの場合は、日本での学校教育をまったく受けていません。従って、漢字や語彙の習得に遅れが見られるだけでなく、文法や表現方法はもちろん、言語を聞き取る耳や発音の仕方も英語的になりがちであり、日本語での学習には相当な努力を要します。一方、就学後に来米した子どもでも、年齢や個人の資質によって差はありますが、現地校での英語による学習の負担が大きく、自宅でも英語の学習に時間が取られ、日本語学習にまで手が回らないというケースもあります。また、日英両語を同時に学習すると、英語にシフトする子どもも目立ちます。しかし、平日には日本語学習時間はなかなか取れません。週末も学校行事や友人との交流、家族と過ごすことに時間を費やすことになりがちです。

そこで、とても重要なのが夏休みなのです。日本での過ごし方はいろいろありますが、学校体験は日本語力アップに有効な手段の一つです。日本語の学習のみならず、同年代の子どもとの会話ができることが大きなメリットです。体験期間は長い方がより効果的ですが、1〜2週間の体験でも十分効果が期待できますし、毎年継続すれば日本の学年相当の力との差を確認することもできます。

日本での過ごし方は学校体験のみではありません。日本には海外ではなかなか接することのできない日本語や日本の文化に触れる機会がたくさんあります。会話、テレビも新聞も、外での買い物も、すべて周囲は日本語環境ですから日本語の向上に繋がるのは言うまでもありません。

しかし、家族や親族のみでなく、より多くの人々と会話をすること、風習や独自の文化に触れる機会を作ることも大切です。例えば、同じ日本語でも、地域や世代によって使われる言葉は異なることがあります。また、目上の人に敬語を使ったり、頭を下げたりというようなマナーや、室内への出入りの際の履物の脱ぎ方、食事中の姿勢などに関する風習と結びついている日本語を、風習の異なる海外で習得することは困難です。さらに、社会科に出てくる神社仏閣や伝統工芸、理科に出てくる日本にしか生息しない動植物などはイメージがしにくいため、それらに関連する日本語も習得し難いのです。

従って、日本で過ごす夏休みには、幅広い年齢層の人々と会話をしたり、スポーツを楽しんだり、豊かな自然に触れたり、伝統文化を肌で感じたりと、多種多様な経験をすることをお勧めします。

 

米日教育交流協議会(UJEEC)・代表
河合塾海外帰国生コース北米事務所・アドバイザー
 

 

                       

                 ~「週刊ビジネスニュース」 2009年3月13日号掲載

                                

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